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2014年11月

2014年11月30日 (日)

真山仁『売国』(文藝春秋)

イマイチだったなあ。売れているし、なんたって真山氏の新作。期待してたんだけどなあ。

今回は宇宙開発と汚職、そしてアメリカに日本を売り渡す政治の陰謀。”日本を買いたたく!”とM&Aで痛快なドラマを創りあげた真山氏がこんなに安っぽいドラマで日本を売り渡しちゃなあ。

経済モノを読みたい。早く帰ってきてくれ。


2014年11月25日 (火)

奥田英朗『ナオミとカナコ』(幻冬舎)

ひとは誰もが、心の中に嘘や罪を宿している。だからこそ、この"素人の殺人"に手に汗握る。

帯でも書かれているように、親友の女二人が、DVを働く夫を殺す。ただそれだけだが、猛烈にハラハラする。

キャリアを積むナオミと家庭に入りDVに耐えるカナコ。共犯の二人が、それぞれの視点で前後半を語るが、我々読者はあたかも三人目の共犯者のように、一緒に殺し、逃げる。

”バレる”のがこんなに怖く感じるのは、奥田氏の優しい人物造形によるのか、自分の背負っている罪によるのか。

ドシロウトの単純犯罪を一気に読ませる快作、秋の夜長にぜひ。


2014年11月16日 (日)

冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦るのか』 (PHP新書)

GとL、が最近流行っているが、その原点が本書。経済をG(グローバル)とL(ローカル)に2分し、特にローカルの特徴を明らかにしていく。

GDPと雇用の7割はローカル経済圏で生み出されるとし、劇的な人口減少の中でその持続のために何が必要かを説く。

地方はすでに人不足。儲からないけどつぶれない。ブラック化による生産性向上という現実。著者は、退出・集約化と生産性向上を妨げる規制改革の必要性を例をあげつつ分かりやすく指摘していく。

理屈では割り切れぬローカル経済の問題を考えるに、一つの座標となる一冊か。

2014年11月 9日 (日)

小野一起『マネー喰い 金融記者極秘ファイル』 (文春文庫)

日銀クラブの記者に飛び込む超弩級情報の怪メール。

真偽は。報ずるべきか否か。締切までのわずかな時間に繰り広げられる裏取り。交錯する思惑。

“リーク”をめぐる銀行、官庁、政治、マスコミの緊迫の情報戦を共同通信出身の著者が手に汗握る臨場感で描き出していく。
経済小説の新たな書き手の出現だ。


2014年11月 7日 (金)

神田憲行『「謎」の進学校 麻布の教え』 (集英社新書)

麻布の入試問題は、素晴らしい。特に、国語。チビの中学入試の時、一緒に大いに考えた。その出題意図と採点過程を本書で教員が語っているが、この良問を、こんなに吟味して採点したら、それはいい子が採れるだろうと思う。

中学受験を控える小学生をお持ちのみなさんなら、本書をぜひ一読してみたらどうか。「自由」を志向する私学のひとつの極がここにある。ただ、どんな子にも合うとも思えない。だから「自分の子がどんな学校に合うのか」を考えるのに、麻布はひとつの明確な基準となるのではないか。

ここからイノベーティブな卒業生が巣立つのは間違いないが、きっとそれは、ここを自ら選んで受験し、楽々と突破する子供たちなのだろう。


2014年11月 4日 (火)

テリー・ヘイズ『ピルグリム』 (ハヤカワ文庫 NV)

全3巻の大作だが、全然飽きさせない。

元諜報員が、バイオテロリストを追い詰めていく。全く姿の見えないテロリスト。全米に撒かれんとしている天然痘。アフガン、トルコ、ヨーロッパ、アメリカと転々する舞台。緊迫したシーンが続く。

今年の翻訳ものNo.1最右翼か。



鴻上尚史『コミュニケイションのレッスン』(大和書房)

これはツボにはまった一冊。

「聞く」「話す」「交渉する」というコミュニケイションの「技術」について書かれた本だが、筆者はまず日本における「世間」と「社会」の二重構造を指摘する。
自分と利害・人間関係がすでに(または将来)ある「世間」と、そうでない「社会」。その場が、「世間」なのか「社会」なのかを正しく認識し、意識して行動することがコミュニケイションの技術向上の出発点と説く。

伝統的日本企業で受け継がれてきた「世間」的人間関係。筆者はそれが近年“中途半端に壊れて”きており、さらにメールやSNSの浸透がコミュニケイションの形態を変質させつつあると分析する。

私のように極めて「世間」的、内向きな「場」でコミュニケイションすることの多い人間には、改めて考えるヒントに満ちている。

それにとどまらず、演出家鴻上尚史氏ならではの、会話するときの身体、声の使い方などのレッスンもさすが。ビジネスだけでなく、日常のあらゆるコミュニケイションに、お役立ちの一冊

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