千早茜『男ともだち』(文藝春秋)
不思議な感覚である。
恋人と同棲しつつ、医者の愛人ともつきあう主人公神名。そこに現れる大学時代の男ともだち、ハセオ。
神名は、戦場に行くとしたら、“恋人は私の心配ばかりしておろおろしそうだから連れていけない。愛人はなんだかんだ裏切りそうで嫌。でも、ハセオだったらいい、と思える。あの男だったら背中をまかせられる。そんな感じ”と語る。
友人美穂は、そんな神名を“女ともだちより男ともだちに守ってもらいたいって時点で、やっぱりずるい”となじる。
それは“ずるい”関係なのか。奪ったり奪われたりするのでない男女の関係。作者はそれを丁寧にかつ洒脱に描写していく。
わかるような、わからないような。このような感覚は、世に実在するだろのか。私を疲れた日常から遠いところに放り出してくれた一冊。とても興味深く、新しい。
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