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2014年8月

2014年8月25日 (月)

藤田正裕『99%ありがとう ALSにも奪えないもの』(ポプラ社)

私のような者には氷水など回ってこない。しかしながら、本を読む。

ALSという難病に罹った人が、どんな思いでいるのか。“ゆっくり全身麻痺になり、死ぬ。そして治療薬はない。” 広告プランナーである著者がそう宣告されてからの苦闘の記録。“意地やプライドを少しずつ削る作業”を続けながらも、支えあいながら生きていることへの感謝を綴る。

詩的な散文から、生への執着と深い洞察が滲みでる。バケツチャレンジはALSという単語を広めるにはたいへんに貢献したが、もう少し詳しく知っていてもよいし、自分で何ができるのかも考えてみたい。ぜひ手に取ってみていただきたい一冊。

2014年8月24日 (日)

エレーヌ・フォックス『脳科学は人格を変えられるか?』(文芸春秋)

楽観主義者と悲観主義者(人生においてよい結果を生み出すのは前者だが)を分けるのは何なのか。

物事を楽観的・悲観的に捉える「認知バイアス」の働き、楽観的・悲観的にとらえる時にそれぞれ働く脳の部位、物事のとらえ方に深く関わる遺伝子~例えばセロトニン伝達遺伝子~、抑うつを遺伝子・脳の回路の働き・認知のくせなどの点から修正しうるか。

まだ謎も多く、結論はすっきりしないが、多面的な研究分野から平易に解説され、さまざまな「視点」を提供してくれる。
遺伝子(最近流行りのエピジェネティクス含め)、脳科学、うつ病治療などの分野に興味のある方なら、一読の価値ありではないでしょうか。

2014年8月13日 (水)

未須本有生『推定脅威』(文芸春秋)

なかなか面白い書き手が出た。


あるメーカーの納入した自衛隊機が、何者かの領空侵犯に対応する中で、次々と不具合を起こす。侵犯機の狙いは何なのか。事故原因は究明されるか。

作者の航空機、戦闘機の精密な描写はそれだけで素人には面白い。飛行機の設計思想、メカニズム、パイロットの思考、メーカーとユーザーの微妙な関係。これまで触れることのなかった領域なだけに、それだけでわくわくさせられる。

確かに舞台が秀逸なだけに、登場人物たちの大根役者ぶりがかなり残念だが、それを補ってあまりある魅力だろう。

人物描写の稚拙さを、脚色と演出で補って、早く映像化されるとよいかもしれない。次回作を大いに期待したい新人。


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