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2014年6月

2014年6月28日 (土)

岸見一郎・古賀史健『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)

“承認欲求を否定せよ。他者の期待など、満たす必要はない。自由とは、他者から嫌われること。”
“叱ってはいけない、ほめてもいけない。それは、他者の評価による「操作」だから。するべきは「勇気づけ」。自分の課題に立ち向かっていけるよう、働きかけること。”
“人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。”

長くベストセラーにとどまっているアドラー心理学の本。心理学者・哲学者の岸見氏からの聞き取りを基に、ライターの古賀氏が青年と哲人との対話形式に落とし込んでいる。我々が「なぜ?」と思うことを青年が哲人に問う形になっているので、一層厳しい言葉が胸に響く。

あとがきに“シンプルかつ普遍的なアドラーの思想は、ともすれば『当たり前のこと』を語っているように映ったり、あるいは到底実現不可能な理想論を唱えているように受けとられかねないところがあります。”とある。

書かれていることに対し、「今」「自分が」どのように感じるか。記述はとても平易で読みやすいが、読み進むほどに自分自身の現在の有様が映し出され、辛くもあり、考えさせられる。一読の価値あり。


2014年6月16日 (月)

田坂広志『知性を磨く「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)

著者は、“「知性」とは、「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力。”と説く。非常に哲学的だが、身近な事例としての「部下の異動」がとても印象に残った。

自分の部下を他部署から「欲しい」と言われた時、出すべきか。深く考えるならば、それはまさに「答えの無い問い」である。この時、知性に乏しいビジネスマンは、答えのないことへの対処として「楽になりたい」と思い、問題を単純化して「割り切り」をする。ここでは「相手が欲しいと言っているのだから…」といって思考を停止し、割り切る。

これに対し、知性を磨き続ける上司は、彼の飛躍のためと「腹決め」し、その後、その部下のことを考え続ける。河合隼雄の“愛情とは、関係を断たぬことである”という言葉を引き、「心の中で関係を断たぬ」という形で、かつての部下のその後を気にかけ、愛情を抱き続ける。それはたいへんな「精神のエネルギー」が必要だが、それこそが、「知性」というものの根底にある力であり、「知性」を磨き続けるために求められる力だ、と説く。

確かに、ビジネスでも生活の中でも、価値観が多様になっているからこそ、「答えのない問い」は増えていくし、我々世代が直面し、解決を求められる。「考え抜く」「考え続ける」ことを止め、淡白になってしまっていないか。自省することしきりである。


2014年6月14日 (土)

勝目梓『あしあと』(文藝春秋)

本源的な人間の情欲を、ストレートに描写。

恨みや妬み、暴力や禁忌と絡み合う情欲。本源的な感性だからこそ、ズシンと響いたり、目を背けたくなったりもする。

本作と米澤穂信氏の『満願』を並べて論ずるものがあるが、違う性質の小説。
プロットに繊細に人間の感情の機微を織り込む『満願』に対し、こちらはあくまで、直球勝負。好みが分かれるところと思う。


2014年6月 9日 (月)

米沢穂信『満願』(新潮社)

それぞれの人に潜む悪意。そのさらに深いところにある嫉妬、情愛、虚栄心。さりげない普通の生活を素材にして、情念が殺意に転化していく様が、静謐に書き込まれていく。

ミステリーと言うよりホラーに近い恐ろしさ。

言わずと知れた今年の山本周五郎賞で、一時店頭から姿を消した本。米澤穂信氏は、昔『ボトルネック』を読んで以来、なんとなく肌合いがあわず敬遠してきた作家だが、今回トライ。

短編集だが一つひとつ構成が巧みで読みごたえがあり、売れるのがわかる。ミステリーのコアなファンには物足りないかもしれないが、人情の機微の描写は秀逸ではないか。





2014年6月 4日 (水)

『教えて!校長先生-「開成×灘式」思春期男子を伸ばすコツ』(中公新書ラクレ)

これはなかなか興味深い一冊。
帯にあるような、秘訣やノウハウの書かれている本ではないし、逆に、灘・開成に秘訣などないですよ、と語っているかのようでもある。

この本で語られるのは、多感な13~18歳の思春期の子を育てるにあたっての、基本的な「考え方」である。

中高一貫校のメリットは?とか男子校の良さは?から始まり、米国の大学に直接進学することの是非、リーダーシップ教育とは何か、親としての接し方まで話題は多岐にわたる。

特に開成の榊原校長の回答は、東大・ハーバードで研究し、教鞭をとった経験に裏打ちされており、説得力に満ちる。

普通の子を、まともな大人にするためには、親が勉強しなければならない。「どのような大人をつくるべきか」「そのために大切なことは何か」。正しいビジョンを持った両氏から普通の子の親として学ぶことは多い。




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