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2014年4月23日 (水)

近藤 紘一『サイゴンから来た妻と娘』 (小学館文庫)

本書は1978年の刊。サイゴン陥落の3年後、私がまだ小学生の頃だ。しかし、ベトナムという国の悲劇の歴史と、そこに住む人々の気質が生き生きと描写され、興味深かった。

特派員として赴いたベトナムから妻と連れ子を伴って帰国。妻は片言の日本語しか覚えようとせず、孵化した卵を食べることを所望し、ライギョをコーラ瓶で殴りつけてオーブンで焼く。趣味嗜好や習慣の違いをコミカルに描く一方で、ベトナム難民の取材で「寂しくないか」と問うた作者に、同行した妻は「なぜそんなバカなことを聞いたのか」と激しくなじる。ここに寂しくない人などいない、ベトナム人ならそんなことは絶対に聞かない、と。

植民地支配、南北の分断、激しい戦争。「ベトナムには決死隊はいるが特攻隊はいない。そんなことをしたら民族が滅ぶ。」長きにわたった苦難を狡猾に、たくましく生きてきた中で形成されたであろうベトナム人気質を、作者は戦争取材の経験も踏まえ、美しい日本語で綴っていく。

タイとベトナム、同じ東南アジアだろ、みたいな己の不明を深く恥じるばかりだ。

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