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2014年3月

2014年3月15日 (土)

架神恭介『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

「お前らに言うとくけどの、今一緒に飯食っとるお前らの中にの、わしのことチンコロするやつがおるけえのお。」

イエスの出現からルターの宗教改革まで、キリスト教の歴史をキリスト組の任侠道として全編広島弁で展開。最後の晩餐も冒頭の通り。ミラノ勅令もカノッサの屈辱も十字軍も、いや、もう、こんな風に書いちゃっていいの??なんて言うか、危ない本を読んでいるような後ろめたいハラハラ感で声も出ない…けど、一気読み。

長く読み継がれる迷著となること必至。各章に史実の解説付きで初心者にも安心です。

2014年3月11日 (火)

吉田典史『悶える職場』(光文社)

「部下をうつにする傾向が強いのは、むしろ20~30代の管理職」「共通するのは、自身が深夜まで仕事するハードワーカー」

「同じようなレベルの仕事を3回与えられたらいずれも高い水準の仕事で応える。これが”仕事の再現性が高い”ということ。再現性の高い仕事を大量にこなし、あらゆる仕事の引き出しやノウハウが無数にある。大量の失敗もしているから、部下がどこで行き詰っているか、手に取るようにわかる。」

「”なぜ、できないのか。”と部下に詰め寄るのはそのできない理由を本当にわかっていないから。プレイヤーとしての経験が未熟で仕事の再現性がない。」「厳しい詰問は部下を育てる、という根拠のない根性論」……思い当たることの多い指摘。

うつ、弱者、格差。当事者へのロングインタビューで構成された、現代の職場で「悶える人々のレポート」、考えさせられます。


2014年3月 9日 (日)

マイクル・シアーズ『ブラック・フライデー』(ハヤカワ)

不正行為を働いて服役した元金融トレーダーが、SECも目を付ける不審な取引を解明せよとの依頼を受け調査を開始するが、次々と関係者が死に追い込まれ…、という展開。

”金融サスペンス”との触れ込みだが、主人公と息子のキャラが最高。高機能自閉症の息子"キッド"は、その障がい故にコミュニケーションもままならないが、物語の要所で絶妙の勘を働かせたり、父を狙う追手とバトルを繰り広げたり。不器用な父親と徐々に心を通わせていくもうひとつのストーリーに、心を打たれる。

この親子で続編も刊行されているようだ。サスペンスとしてのプロットはやや甘だが、この名コンビの未来に期待大。

2014年3月 2日 (日)

江上剛・郷原信郎『銀行問題の核心』(講談社新書)

一勧出身の江上氏と検察出身の郷原氏が銀行の問題について議論するなんて、もうそれだけで買い。

特にみずほの反社融資の問題に切り込んでいく一章。反社融資をトップは知っていたのか。金融庁は検査でそこを見たのか。取締役会議事録には書いてあった。結局みずほは金融庁を守って泥をかぶろうとしたのではないか。
双方が対応を読み誤って炎上していく様を、既に終わっていたはずの護送船団的発想の限界の側面からもあぶりだしていく議論はなかなか読みごたえあり。

舌鋒鋭いが、発言の裏に「でも銀行にはがんばってもらわないと」という想いが読み取れて、読後感がよいのがいい。


佐川光晴『鉄童の旅』(実業之日本社)

鉄分の濃い皆さん、またそそられる本が出ましたよ。『おれのおばさん』の佐川光晴氏。

"国鉄時代、列車は大らかな乗り物でした。鉄道の運行にかかわる職員たちも、気のいい連中が多かった。売店や駅弁屋のおばさんたちも含めて、みんなが長屋暮らしをしながら働いているような雰囲気がありました。いい加減なところもありましたが、手綱をうまく引き締めてやりさえすれば、みんなよく働いたものです。"  国鉄時代を懐かしむ元東室蘭駅長の回想です。

そんな温かい「鉄道」というゆりかごに揺られて、少年が成長していくお話。北の大地を進むゴトゴトという汽車の音、連絡船の汽笛…。鉄道って、ホントに「物語」ですね。お楽しみくださいませ。

2014年3月 1日 (土)

瀬木比呂志『絶望の裁判所』(講談社)

折しも、竹崎最高裁長官が任期途中で交代の報が流れた。本書によれば、竹崎長官は裁判員制度導入を主導した刑事系で、数としては少ない刑事系裁判官を露骨に枢要なポストにつける大規模な情実人事を長く行って、現在の裁判官のキャリアシステムを歪めた大悪人とのこと。
まあ、その評価はともかく、かなりの権力者だったとすると、健康理由の任期途中の退任は何らか現政権の意向が働いた更迭か?などと勘繰ったりもする。
この本は裁判所は根っこから腐っている、という徹底した裁判所批判。しかし、あまりに憎悪に満ちていて、内部通報システムの告発文を読んでいるようだ。ここまで悪しざまだと、書かれている事象が事実か、というより「どんな人が書いたんだ??」と、ご本人の人柄に関心が向いてしまう。
もし立派な人なのだとすると、ここまで書くとかえって品格に傷がつくような…。まあ読み物としては面白いですけど。

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