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2013年9月

2013年9月21日 (土)

牧原出『権力移行』

牧原出『権力移行』。これは好著。自民党政権誕生から二度の政権交代、民主党政権瓦解まで、その政策決定・実行過程を党―内閣(官房)―官僚機構の力学を軸に平易に解説。省庁再編を経て、今後政権交代をスムーズに実現させるための官僚機構と政治の関係の在り方に論は及ぶ。小泉型「官邸主導」が生まれたプロセスの解析や、官僚機構を内務行政型、大蔵・財務主導型、経済産業政策型の各ネットワークに分類し、各々が盛衰しつつ政策決定過程に関与してきたとする分析は面白かった。筆者の言うよう、無益なバッシングとアマチュア的評論を離れ、国益にかなう公務員制度の設計がされてほしい。しかしNHKブックス、売り方が下手すぎるだろ。書名も煽りも芸なさすぎ。

池井戸潤『シャイロックの子供たち』

半沢直樹を見ていたら、ヨメが「上戸彩ちゃんが家にいたらいいだろうねえ」というから「そうだよねえ」と答えたらムッとした。だったら聞くなよ。確かに心の底からそう思ってましたよ、何か?
それはともかく池井戸潤『シャイロックの子供たち』。銀行のある支店をめぐる連作短編集で、登場人物それぞれの視点から銀行内のさまざまな事件を描く。途中から、百万円紛失をめぐって物語はミステリー色を帯びていく。しかし、この作品のもうひとつの側面は「家族」だ。出世欲と保身の渦巻く(と描かれている)銀行。しかし、それぞれの行員は、みな家族を「背負って」いる。その家族の行員への向き合い方もさまざまなら、背負う行員の「背負い方」もさまざまだ。しかしながら、みんな「背負って」いる。銀行員だけでなく、サラリーマンなら、家族を背負うものなら、泣けるなあ。

2013年9月18日 (水)

桜木紫乃『ホテルローヤル』

言わずと知れた直木賞。ラブホテル

をめぐる七つの短編集。世の中には強い人間と弱い人間の2種類し

かいないんじゃないかと時々思う。その弱い人間が、なぜか心の奥

底から強くて熱いものを掘り出してしまう。その「装置」としてラ

ブホテルが描かれているように思えた。ラブホテルってそんな場所

だったか。うーむ…。

2013年9月16日 (月)

朱野帰子『駅物語』

朱野帰子『駅物語』を読了。思わず手に取ってみたくなる装丁。駅を舞台にした成長物語です。「この駅を利用するお客様に幸せな奇跡を起こすことができる、そんな駅員をめざしたい」とあいさつする入社試験一位の女性大卒新入社員。しかしそこには過去と捩れた思いが。鉄道を「好きになるためにがんばった」という先輩社員は彼女に「あなたは本当の自分を見せない。こっちも心を開けないし、第一危ないよ」と言い放つ。お客様とのトラブル、人身事故の恐怖、新人の鬱…。駅勤務経験者なら、甘くて苦い思い出が思い起こされます。
エピソードには事実と違うものもありますが(特に暴力行為にはずっと厳しく対処します)、駅の仕事の雰囲気は出ているかな。「我々が乗客に提供するものはひとつ。いつもと変わらない一日」、という古参助役の一言は古いようで心に響きました。まあ、日常過ぎて半沢直樹くらい脚色してもいいじゃないかとも思いましたが(笑)。

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